新型コロナウイルスの拡大は、経済や人々の生活に大きな影響を与えた一方で、働き方や暮らしを見直す契機となっています。
新たな人の流れや地方への関心の高まりを逃さず、チャンスに変える「新しい働き方」へ。長岡の挑戦が始まっています。
近年、ICT(情報通信技術)の普及でテレワークなど時間や場所を問わずに働ける「職場と仕事の分離」が進んでいます。
市では昨年度から、企業が本社から離れた場所に設けるサテライトオフィスを積極的に誘致。新しい働き方への取り組みで市と協定を結び、音楽配信事業などを展開するUSEN-NEXT GROUP[ユウセンネクストグループ](東京)のオフィスが8月、誕生しました。
ナガオカワーカー、始動
また、多様な働き方を実践する「ナガオカワーカー」制度も開始しました。
長岡で暮らしながら、首都圏企業の本社に所属。同待遇でリモートで勤務する新しい働き方です。来春から同グループで働く県内出身の学生7人が1期生となります。
【問】 産業立地課 ☎ 39-2228
幅広い企業との連携で、 ナガオカワーカーの拡大目指す |
鰍tSEN‐NEXT HOLDINGS 執行役員 住谷 猛(すみたに たけし)さん |
4大学1高専が集まる長岡には優秀な学生がたく さんいます。採用を通じて、長岡の学生の地元愛に は本当に感心しました。「長岡が好き、長岡で働き たい」を実現するナガオカワーカーは、これからの 時代の新しいワークモデルです。首都圏の幅広い分 野の企業から取り組みに賛同いただき、学生や企業 の枠を超えて連携できるコミュニティに成長させた いです。
デザインやマーケティング、広告業などやりたい仕事が地元にない―。そのような理由で首都圏に出ていく若者は大勢います。
海外とのオンライン商談やリモートワークが多いイカサデザインは、同社唯一の写真スタジオを備えた事務所兼ショールームを10月、市内にオープンします。
同社取締役の山田さんは、岐阜生まれで長岡造形大学の出身。大学時代に住み慣れたまちに帰ってきて、暮らしと仕事の両立を実現しています。
いつでもどこでも仕事ができるため、地方の方が通勤時 間やオフィス確保に無駄がありません。疎遠になりがち な首都圏の仕事仲間とも、長岡なら新幹線ですぐに会え ます。散歩でさえ遠慮がちでしたが、長岡に来て家族と 過ごす時間が増え、気兼ねなく暮らせています。
9月1日に市内2カ所にサテライトオフィスを開設した東急エージェンシー。長岡オフィス(ディアプラザ長岡内)では、長岡地区ソフトウェア産業協議会の会員企業4社18人が同社のシステム保守の業務を担っています。
また、長岡技術科学大学内のオフィスでは、ICTの保守・運用の効率化を目指し、同大学との共同開発を検討しています。
同社・ICT担当の岡ア清範さんは「技大にはかなりの技術力があります。共同研究で成果が出れば他の社内部署との研究も視野に入れていきたいです。」
デジタル化を担当する神通(じんづう)靖彦さんは「長岡は産学官のバランスが優れているところが非常に魅力的です。今後は、市内の学生との連携も進めていきたいです」と語りました
長岡オフィスでは、東急エージェンシーのICT 部門の運用・保守を受託しています。これまでに なかった、市内4社合同チームで臨みます。東急 エージェンシーの技術を支え、長岡が重要拠点に なれるよう頑張ります。
長岡にいても最先端の仕事ができる時代です。今後は、長岡 に住みながら首都圏の企業で働く人もさらに増えていくでし ょう。オフィスという拠点があることは、新卒の学生やUタ ーンしたい人にとっても魅力的なはずです。在宅とオフィス を自由に組み合わせることで、時代に合った新しい働き方に なると感じます。
サテライトオフィスの役割などの疑問を解決するため、学生が企業の担当者を直撃取材。「どうして長岡なのか」「オフィスの役割は」などを質問しました。
応じたのは11月に開設するフラー・長岡オフィス代表の坂詰さん。長岡工業高等専門学校、長岡技術科学大学を卒業後、市内メーカーを経てフラーに入社しました。
長男誕生を機に5年前にUターンで福岡から新潟に。今回、地元長岡にオフィスの開設が決まり、自分の住みたい場所で好きな仕事ができる?という夢をかなえています。
リモート派?
対面派?
これからのコミュニケーシ ョンの在り方では「便利だけ ど、リモートだけの世界は寂 しい」「顔を合わせた人間ら しい付き合いや対話をもっと 増やしていきたい」などと、 対面の重要性に共感する声が 上がりました。
長仕事に一番求めるのはやりがいです。暮らすなら自然豊かな
地方が好きです。 ――技大修士1年・外川佑樹さん(左)
サテライトオフィスができれば、働く環境の幅が広がること
がわかりました。さらに魅力的な企業が増えると良いです。
――技大修士2年・齋藤祐功さん
佐藤 花音 (はるね)さん(左) 東京での就職を希望していましが、ウイルス禍で考えが変わりました。ナガオカワーカーのように地方でも都会と同じ水準の仕事ができるようになれば、就職先の大きな選択肢になります。 |
剱持 乃愛 (けんもち のあ)さん 将来はウェブデザインの会社で働きたいと思っています。地方での生活が好きなので、さまざまな業種のサテライトオフィスができてくれるとうれしいです。 |
地元×挑戦 |
長岡の人たちは
とても粘り強くて頼りがいがある。
これからも地元での雇用を最優先に、
地域と共に挑戦し続ける会社でありたい
地元に寄り添い新しいチャレンジを続ける太陽工機。渡辺社長と技大出身で入社11年目の阿部さんに社風や目標などを話してもらいました。
渡辺 当社は、西陵町にある工作機械メーカーです。車や産業機械の部品を精密加工する研削盤の開発から販売までを行っています。
阿部 私は、機械を操作するための対話ソフトのプログラム開発を担当しています。
渡辺 ソフト部門の中核を担ってくれています。柔らかい頭にいつも期待しています!
阿部 こちらは毎日胃に穴が開く思いです(笑)。
―2人のやりとりからも雰囲気の良さを感じます。
阿部 本人の前ですが、本当に話し掛けやすく、仕事の相談もしやすい社長です。
渡辺 私は社員との距離感を大事にしています。だから現場では積極的にこちらから声を掛けるようにしています。
―新型コロナワクチンの職域接種に、県内でもいち早く取り組まれていましたね。
渡辺 これも一つのチャレンジでした。ウイルス禍で正常な企業活動ができない中、少しでも地域のためになればと思って。従業員の7割近くは長岡市民。地域あっての会社です。地元の人の雇用を最優先で行っています。長岡人は粘り強い性格の人が多く頼りになります。
―激動の時期が続いていますが、これからの目標を。
阿部 プログラミングのスキルを活かし、社内のさらなる業務改善や機械のソフト開発にも挑戦していきたいです。
渡辺 海外拠点を持っているので、世界シェアの拡大を狙います。また、西部丘陵東地区の新工場の構想も動きだすため、社員が今まで以上にやりがいを持って働ける職場環境を検討していきます。
これまでの当たり前が通用しなくなった今だからこそ、物事を俯瞰(ふかん)で捉え、あらゆることへの挑戦を続けます。そして、社員、地域から愛される会社を目指していきます。
移住×起業 |
早田 剛 (はやた つよし)さん 中古車販売・メンテナンス会社 スターレ 代表 1992年 大阪市交通局入局 2018年 起業の準備を始める 2019年5月 妻と長岡に移住。 「スターレ」を開業 |
大阪から長岡に移住し、中古車販売会社を起業して3年目となる早田さん。移住から起業までの経緯や仕事への想いを聞きました。
―長岡に来た経緯は。
妻が越路地域の出身で、将来、親の介護がしやすいようにと移住を決めました。大阪では地下鉄の運転手をしていました。退職した後、起業に向けて昔から好きだった車の整備や販売などを勉強していたんです。
―慣れない地へ移住し起業。
不安も大きかったのでは。
友達も知り合いもいませんからね。全て一からのスタートという感じです。起業するにも何から手を付ければいいのかわからない状態でした。そんな時、起業の相談ができるCLIP(クリップ)※を訪ねたんです。
―働く上で大切にしていることは何ですか。
知らない土地だからこそ、個性を活かし、関わる相手一人ひとりと真剣に向き合っていくことを信条にしています。
お客さんとも信頼関係ができ始めた今、仕事を楽しめる余裕も生まれました。これからも気張らずに楽しんで仲間を増やしていきたいです。
―長岡暮らしの感想を。
多くの偉人を生んだ歴史や豊かな自然など、どれをとっても魅力的です。雪化粧された山古志地域の風景が好きですね。雪が降るのを毎年楽しみにしてるほどに(笑)。長岡暮らし、満喫していますよ!
どこで働こうとも、
人と真剣に向き合っていくことを信条に。
楽しみながら仲間を増やしていきたい
■長岡暮らしのことなら
移住定住相談センターにお任せ
長岡への移住・定住を希望する人の仕事や子育て、住まいなどの相談に、ワンストップで対応。長岡暮らしをサポートします。電話やウェブ会議システム「Zoom」での相談もできます。 | ▲公式ライン |
■起業、経営の相談はCLIPへ
県の民間スタートアップ拠点に認定されている「新潟県起業支援センターCLIP(クリップ)長岡」※(【問】☎ 94-5040)。県内の他の起業支援拠点と連携し、起業家の育成や企業の挑戦を後押しします。
相談は無料です。
場所 NaDeC BASE(ナデックベース)
担当=産業イノベーション課 ☎ 39-2402